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今日も元気に玖我さん一家
そういや明日は22日、11月22日、いい夫婦の日ですね
違いましたっけ?いい夫婦、静なつ夫婦(´∀`*)

またやっちゃった感が否めないss

設定は前と変わらず、今日も元気だ玖我さん一家の続きっぽいですが
別に分けてもいいようなssです

お父さんが書きたかったんですよ、お父さんが







公園のブランコに座り、近くの鳩に餌をやりつつ遠い目をする人。
これが休日でなかったら完璧にリストラされた会社員だろう。
これがただのおっさんだったら、こんなにも目を引く事は無かっただろう。
ブランコを軽く揺らしながら座るのは、なんとも美人さんである。
それだけに哀愁が帯び、それだけに大変奇妙なのだが、本人にその自覚は無いようだ。
ふと、鳩に餌をやる手が止まる。
地面をつつく鳩を一心に見つめ、何か考え込んだ顔になり、盛大に溜息を吐いた。

「いや、だがしかし、あの様子からすると…」

ぶつぶつと呟き始め、遂には泣きそうな顔になる。
そんな彼女を慰めるかの様に鳩が群がってきた。

「お前ら…よし、もう全部食え」

ばら撒かれる餌。実際の所鳩が群がってきた理由は、
もう彼女の周りにしか餌が無かっただけの事なのだが。
やっぱりというか、なんというか、気付いてないようだ。
餌を食べ続ける鳩、数にして十数匹、そんな鳩を見つめ続ける人間一人。
実に奇妙で近寄りがたい空間だ。

…十分程した頃だろうか、鳩はもう群がってはいなかった。

「薄情者め…!」

新しくやって来た老人が簡素なベンチに座り、餌を撒きはじめたのである。
それを見るなり鳩達は一目散と言っていいくらいに老人へと羽ばたいていった。
鳩達も居なくなり、ぽつんと一人残される。

「…今頃三人で、楽しい時間を過ごしてたりするのか?」

自分が居ないその場所で、三人楽しく。
ごーん、と重い音と衝撃がした気がする。記憶が正しければ今日で四回目だ。
どうして、こんな寂しい休日を過ごさねばならないのか。



「あ、あの、なつきママ?」
「ん?どうした?」

何だか言い難そうに、しかも拳を作ってたりしていたのは、
なつきの愛娘の一人である留夏。
こんなにも言い難そうにしているのは珍しい事で、頭に疑問が浮かぶ。

「どうしたんだ?何かあったのか?」

はっとする、もしかしたら学校で何かあったのだろうか。
近所の悪ガキ共に何かされたのだろうか。

「もしかしてお前苛められたか!?どこのどいつにだ!」

くわっ!と目を見開き、今にも誰かに掴みかからんばかりの形相に、慌てて留夏が答える。

「ち、違うよ!いじめられてなんかいないから」
「そ、そうか…えーと、じゃあ一体なんだ?」

自分の早とちりを誤魔化すかの様に留夏に言うように促す。
それでも留夏は言い難そうにしている。
決心した様に口を開きかけたと思えば、また閉じる。
その繰り返し。
大人しく待っていたなつきだったが、段々と苛立ちを感じ始めてきた。
何度も座る位置を変えたり、足でリズムを刻んだり。

「はっきり言――」
「お散歩行って来て!」
「……はい?」

古くからの友人よりは抑えめな、はい。
お散歩行って来て?あれだけ言い難そうにしていて、内容がお散歩?

「まあ、行って来てもいいが…」

そこで思いつく、もしかしたら留夏は一緒に行ってもらいたいのか、と。
な、なんて可愛い子だ!と内心大喜びななつきだったが、それを顔に出すまいと
いやに真剣な表情を作る。
ここで私に求められたのは誘う事だ!一緒に行くか?と!

「留夏も一緒に、い、行くか?」

ちょっとどもってしまったが、それはご愛嬌であろう。
これから発せられるであろう言葉を、少しにやけつつ待つなつき。
しかし。

「えと、あの、あのね?一人で、行って来てくれる?」
「よし!一緒に…って、え?」

聞き間違いだろう、そう思いたかった。
だがしかし、留夏の口から出た言葉はさっきと同じ。

「一人で、い、行って来て?」

本日一回目の音と衝撃が頭の中でした。



ふらふらとソファから立ち上がり、リビングから出る。
留夏からの言葉は、かなりの衝撃だった。
一人で行って来い、その言葉から導き出される答えは、嫌だが一つ。

一人で行け→この家に居てもらっては困る→というかなつきが居ると嫌=
反 抗 期

「いくらなんでも早すぎるだろう…でもあっても、あっても!」

おーう、と訳の分からない叫び声を呻く様に発しながら頭を抱えるなつき。

ぎし
「あ…」

床が少し軋む音に、可愛らしい声。
頭を抱えるのを止め、その方角を見ると、居たのはもう一人の愛娘である静姫。
視線が合うと困った様に笑った。

…なんだ静姫、その目は!私を見ただけで困るのか!?

するとなつきは思いつく、留夏は早めの反抗期に入ってしまったが、
静姫はまだだろう、誘ってみるか?と。
しかしさっきの事もある、留夏の様に断られてしまったら、更に心の傷が増える気がした。
じっと静姫を見る、やっぱり困った様に笑っている。

「…静姫」
「な、なんやろか?」

懇願する様な瞳に戸惑っているのがよく分かる。
ぐっと拳を握り、意を決して誘う。

「散歩、一緒に行かないか?」

眉を寄せて、言う。
うっ、と言葉に詰まっている静姫。

「しゅ、宿題があるよって。今日はちょお…せやから、なつきお母はんだけで…」

本日二回目の音と衝撃、
なまじ傷つけまいとしたその静姫の優しさが痛かった。



ぱたぱたと早足で立ち去る静姫の足音を聞きながら、なつきはふらふらと廊下を歩く。

目に入った瞬間困る→断られた挙句遠まわしに一人で行け→なつきと一緒に行きたくない=
反 抗 期

反抗期、一人がなっても嫌だが、二人いっぺんにも嫌だ。
体が重い、きっと心が重いせいだな、なんて思いつつふらふらと歩く。

待てよ?あと一人、あと一人だけ、居るじゃないか。

遠い昔から、いつも傍に居てくれた人。
重い体が、その人を思うだけで軽くなる。きっと静留なら、静留ならば!
一時的に軽くなった体が静留が居る台所へと赴く。

「静留!散歩行こう散歩!」

半ばやけに近い声で誘う、だが。

「お散歩どすか?ん~…堪忍、なつき。今日は家に居らんとあかん用があるさかい」

申し訳なさそうに言う静留、あっさりと期待は打ち破られた。
本日、三回目。

静留が食器を洗う音を聞きながら、なつきはふらふらと廊下に行き、玄関へと。
全員に散歩に行かないかと誘った手前、行かなくては不自然で、けれど一人で。
床に座り、のろのろと靴を履く。
その背中は寂しげで、悲しげで、なつきのあまりに暗い雰囲気を察したのか、
寄り添う影が一つ。

くぅーん

「デュラン…」

まるで、なつきさん元気だせよ、と慰めているかの様に
ぽすっ、と背中に肉球の感触。
その柔らかさと温かさにじわりと瞳に涙が滲み、零れてしまう前にそっと指で拭うなつき。

「デュラーン!」

がばっと抱きつき、わしわしとデュランの頭を撫でる。
デュランもなつきの肩に擦り寄り、くぅーんと鳴いていた。
数分程そうしていただろうか、なつきはふとデュランから体を離し、
じっとデュランの円らな瞳を見つめる。

「デュラン、お前なら、お前なら…!行ってくれるよな?」

…きゅーん

ふさふさの体が離れていく。
廊下の半ばで止まり、首だけで振り返るデュラン。
円らな瞳がうるうると揺れた後、なつきの視線から逃げるように奥へと消えて行った。

「お前まで…」

なつきの体が震える。

「う、うわーん!」

右腕で目を押さえ、自慢の長い髪を振り乱しつつ、こうしてなつきは家から飛び出した。



地面に様々な長い影が伸び始める夕暮れ時。
辺りはすっかりオレンジ色に染まり、いつの間にか公園にはなつき一人しか居ない。
鳩達でさえ、もう帰る時間になったのか次々と空へと羽ばたいて行く。

「ねぇママー、今日の晩御飯はー?」
「今日はカレーよ」
「カレー?何カレー?」
「そうね、ビーフね」
「わぁい!ビーフカレー!」

微笑ましい親子の会話。しっかりと手を繋いで歩いていく。
ブランコが揺れる。
なつきの頭上の空はもう暗く、明るいのは遠い遠い地平線。
無言でなつきはブランコから立ち上がり、公園の出口へと歩いていった。


「…ただいま」

誰に言った訳でもなく、もしかしたら自分に言ったのか、小さい声だった。
奥から光が漏れ、どうにか足元を確認できるくらいの廊下。
変だな、となつきは思う。いつもならもう廊下の電気はついてる筈だというのに。
でもそれは特別におかしい事ではない。
こんな時もあるだろう、と思い、やや乱暴に靴を脱ぐ。
薄暗い廊下を光の筋を頼りに静に歩き、リビングへの扉に手をかけ、開ける。
明るい部屋、けれどそこには誰も居ない。
なつきが呆然と立っていると、忙しそうに何か抱えて来る者が一人。
髪を一つにまとめ、子供用と思われるエプロンに身を包んだ留夏。
小さな両手で、子供が持つには少し大きいと思われるお皿を持っている。

「ふぅ…これで全部かな?」

そう言いながらテーブルに近付き、ことん、とお皿を置いた。

「んーと、うん、全部だ」

数えている様にひとさし指が動き、満足げに腕を組んだ。
と、くるりと体が反転する。

「…な、なつ、なつ、なつきぃ!?」

それはもう、気持ちのいいくらいに綺麗な仰け反りっぷりである。
かなり慌てた様子で、わたわたと腕を上下に動かしている。
それは何かを隠しているような、そうでないような動きで、と。

「留夏?そないに大きい声出してどない…」

がたん、がた、ぐわん、ぐわん、ぐわぐわわわ…
ステンレス製のトレイが床に落ち、盛大に部屋に響く。
落としたのは静姫、静姫もまたエプロン姿であり、髪を一つにまとめていた。

「…な、なつ、なつ、なつきお母はん!?」

やはり姉妹なだけあってリアクションが似ている。
そんな事を頭で思いつつ、慌てふためく子供達をぼんやりとなつきは眺める。
何故だか二人は慌てていて、それはなつきの事が目に入ったからで。
つまり、なつきに見られたら慌てる様な事をしているわけで
何だか視界が滲み、二人の姿もぼやける。

「う、うわーん!」
「はぁ?って、な、なつきママー!?」
「なつきお母はん!」

脱兎の如く走り、ばたばたと廊下を駆け抜ける。
揃えられてもいない靴を器用に履き、玄関から飛び出した。
走る、走る、もう暗い道をひたすらに。

「っは、はぁ、っく、なつ、なつきママー!」
「うわーん!」

留夏の声が聞こえているのかいないのか、ひたすらになつきは走る。
段々と開く距離、いくら留夏がなつき譲りの運動神経の持ち主と言えど、
やはり大人と子供、留夏の方が失速してきた。

「っく!こうなったら…」

ちら、と視線を向けるとそこには留夏を気遣ってなのか、
本来の速さで走っていない大事な友達の姿。

「デュラン、GO!」

「うわーん…ぐはぁ!?」

「よし!」

…きゅーん

「はっ、はっ…な、なつき?し、しっかり!」

本来ならば閑静な住宅地に、留夏の悲痛な叫び声がした。



「…静留」

ぷるぷると肩を小刻みに揺らし、こちらに背を向けている静留に声をかける。

「なんどす?」

その声は何かを必死に抑え、堪えているようで、少し上擦る。
そんな声を出す静留に、何ともいえない気持ちが沸々と湧き上がる。
早くあの震える肩を止めなければ、その声を普段の声にしなければ。
でなければ、この湧き上がる気持ちでどうにかなってしまいそうだった。
肩を大きく上下させるくらいの深呼吸。吸い込んだ空気で、大きく声を出した。

「いつまでも笑ってるな!」

なつきの大きな声で抑えていた物が無くなったのか、
肩、というより体全体を震わせながら、遂には声を上げて笑い出す。

「だから、笑うな!」
「っひ、く、ふ、堪忍、堪忍な?せやけど…」

止まらへん、と短く言って、また静留は肩を震わす。

「だーっ!もういい!寝る!」
「あら、拗ねてしもた?」
「…うるさい」
「やっぱり拗ねてはる」
「拗ねてなどない!」
「そお?」

ぷにっと頬を突付かれる。
軋むベッド、自分の物ではない体温と柔らかな物が背中にあてがわれる。
しばしの沈黙。

「あいつら、その、どうだったんだ?」
「ん?どうて?」
「私が、居ない間」
「えらい頑張りましたえ。なつきお母はんの為や、言うて」
「…そ、そうなのか」

静留がなつきに擦り寄る。

「どうでした?」
「ん、まあ、う、嬉しかったし、美味かった」

目に浮かぶのは様々な料理。子供達の伺うような、不安げな表情。
美味しい、そう言うと、本当に嬉しそうに笑ってくれた。

「静留」
「はい?」
「ありがとう」

それだけ言うと、なつきは枕に顔を埋める。
昔よりは感謝の意を素直に言える様になったものの、やはり照れ臭い。
暖かいベッドと、美味しい料理と、そして今日の疲れで、眠気がなつきを襲った。
ゆらゆらとした心地の中、浮かぶ留夏と静姫の姿。
少しぼやけた二人に微笑み、なつきは眠気に体をゆだねた。







ぎしっ

「…しずる?」「なんやろか?」
「どうして私の腕が動かない?しかも両方」
「うちが押さえとるから」

「何で私がお前を見上げてるんだ?」
「うちがなつきの上に乗ってますさかい」

「しずる」「ん?」「私は眠いんだが」
「気にせんと、なつきはうちに任しとったらええんどす」
「あのな!」

「ご褒美」「はぁ?」
「あの子らにはくれたのに、うちにはくれへんの?」
「なっ…ご褒美って…」「くれへんの?」
「うっ…そ、そういう瞳をするな!」

「なつき…」
「ぐっ…ああもう、分かったよ」

強制終了
ちょっと尻切れトンボ気味、直すかもしれません、いつか
by nominingen | 2005-11-21 23:32


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