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冬コミ情報
一日目 西地区“け”ブロック-41b
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ジャンルははやて×ブレードで今回も出ます。

新刊情報はこちら

Wedding Album」 B5 68ページ(表紙込み)
ひつ静+(主にレギュラーの)オールキャラ本。
ノミ汰の文も微妙に入っておりますよー。
※クリックで大きくなります
※また表紙は箔押し印刷のため、イメージです

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もう一冊なんとか入稿完了しました!
お伽草子」 A5 表紙込み48P(本文43P) 小説
昔話をもとにした三本立ての本です
相方が画像をつくってくれたのでこちら!(キャストの間違いがあったので上げ直しました
※クリックで大きくなります
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作中の表現では普通にキャラ名で書いてたりそうでなかったりするのであしからず





瘤取り

今は昔、ある村に二人のおじいさんがおりました。
一人のおじいさんは頭になんとも奇妙奇怪な二つのこぶがありました。そのこぶは大人のこぶしほどの大きさで、茶褐色の毛が無数にびっしりと生え、
よく見ようと陽光に透かしてみますと、
ほのかに薄い紅色に見え、時折ひくひくとうごめくという何とも妖めいたものでした。
そしてもう一人のおじいさん、こちらはこぶが腰にありまして、それは長く、一振りの太刀のような代物で、
これにもやはり無数の毛が生え、
なんといってもこちらは本人の意思とは無関係に、
巧に操られる鞭のようにしなり変幻自在、別の生き物の様に動くこぶでございました。
何の因果があり二人にこぶが出来たか、
それはお釈迦さまにも分らぬことでございますが、
二人がどのようなお人だったのかは、語られております。まず二つのこぶ持つその人の名は柳生真といい、
風に薙いだような髪をそのままに、鷹のようにきりりと光る眼を持っていたといいます。
そして一つのこぶ持つその人の名は神門玲といい、無造作に切りつけた艶やかな黒髪と、
眉目秀麗な中にも鋭き眼光があったといいます。
二人の家は離れ、出会い頭の挨拶もなければ会う
機会もよしみもありませんでした。


このお話は、そんな二人のこぶという奇怪な縁にまつわる話でございます。


天高く馬肥ゆる秋の空、ひょろろと鳶の声が鳴る。
思い付きの詩句もどき、ちょいと調子の声をつけ、ひらりと衣を翻し、裾をぴらりとはためかせ、
見えぬ鳶に思い馳せ、そうしてくっくと笑えたら、良きかな良きかな踊る阿呆に踊らぬ阿呆、
同じ阿呆なら踊らにゃ損々。
稲の束なぞこの通り、ひょいと担げば扇が如く、も一つ加えて金羽織、運べばさらかさ音が鳴る。
どさりと置いてさあ次は、ひょろろと鳴いた彼奴みたく、稲の羽衣つくろうか、すると遠くに声がする。
ひょろろと鳴かないこの声は、はてさて一体、
「やや、これは」
そうぽつりと呟くと、はあはあ息を荒くした、娘夫婦の姿あり。
中々急いできた様で、額に汗と足袋に泥、やあやあこれはご足労、さてさてすこうし困ったな、詩句のもどきも
ここまでか、と柳生のおじいさんは二人に笑いかけた。
「どうしたでござる、二人とも」
「どうしたじゃありませんよお父さん。稲束の片づけは私達二人でやりますのに」
「そうですお父さん、さ、もう休んで下さいな」
まくし立てる娘と婿の言葉に、おじいさんは曖昧に笑った。
「たまには体を動かさないと調子が出ないのでござる」
「そう言ってこの前も朝早くから畑を耕していらした
じゃないですか。お体に障ります」
眉を寄せ、いたわりの言葉をかけてくれた者の名は、槇と言った。
横でこくりと頷いて、少しばかり怒ったように心配してくれたのは娘のゆかりである。
二人ともよく気を遣い、よく働いてくれた。
槇は唯一の道楽と言えば絵を描くくらいのもので、打つも賭けるも買うもしない、まっこと申し分のない婿である。
娘のゆかりとは大層気が合った。
槇は娘の生来の頑固さと気の張りを上手い具合に弛め、ゆうるりと自身の穏やかな気性をもって迎え入れた。
よそ様からは尻にしかれたかかあ天下と見られる事もあるが、実際後ろ手に手綱をもっているのは槇である。
普段はそれに触れもしないが、いざとなればいつの間にやら握りしめ、きりりと結び、妙技をもって気をおさめる。
だが本人に締めようだのなんだの、そんな気がないので槇の手はいつもひらかれ、なでるばかりであったが。
それに気づかぬ娘ならば、これこれと一言物申していただろうが、ゆかり利発な娘であった。
必要があれば綱を握り、導く相手がいるからこそ、ゆかりは野を走る奔馬のように自由で、思慮深い。
さあさあ戻って下さいまし、との二人の声に、いよいよ 真は諦めて、己の頭のふさふさ茶色の毛が生えた、
二つのこぶをしょげさせた。

日の落ちるのがめっきり早くなった、
そう肌と目で感じるのがこの季節である。
とんとんと耳に心地良い調理の音を聞きながら、己の錫色の頭からひょっこりと出た、ふさふさとした茶色の毛に 包まれたこぶを撫でた。
娘が結婚して間もない頃から妙に頭がむずがゆく、
時折掻いては放って置いたのであるが、気づけば中々に主張の激しいこぶになっていたのである。
奇怪な出来ごとに周りは大変気を遣ったりしたが、至ってなんら害はない。
嬉しい時にひょこりと起きて、
悲しい時にはくたりとしょげる。
己に合わせて時折ぴくりと動くこぶは、
まるで面白おかしい友のようであった。
ふと、味噌の良い香りに鼻をならすと、卓が運ばれてきていた。
かぶと菜っ葉の味噌汁に今年の新米、出し巻き卵と山菜に沢庵と、充分な食事である。
「うむ、美味そうでござる」
ぽつりと呟いたのに合わせてこぶもぴょこりと動き、お前もそう思うか、よしよしいざ食べようではないか、
箸を持ちて手を合わせる。
いただきます、と真の号令で食事が始まる。まずはずずいと汁を飲み、これはうまいと声をかけ、
婿と一緒にうなずいた。
やあやあ娘は頬を染め、婿は静かに笑うとな。
箸が進めば気もそぞろ、今宵の風は冷えるとな。
火箸に伸びた二人の手、ぴとりと触れて、炭が鳴る。
ぴくりと動くはこぶ二つ。
「そうそう酒はござらんか?ああいや気にせずどれ
見よう。とっくりひとつに猪口ひとつ…いやいや槇殿、無理はせず、
あしびきの、山鳥の尾のしだり尾の…」
はてさて気づけば奔馬はとてもしおらしく、
婿は慈愛に満ち満ちている。
酔ったも酔った、泥の様。翁は布団に帰ろうか。
秋の夜長はすべからく、夫婦の為にあるのである。

娘と婿は川へ洗濯に、おじいさんは山へ柴刈りに、
というのは殆ど手慰みのようなもので、
本当の所は腰にぶら下げた瓢箪、その中身が目当なのだ。
瓢箪は歩をすすめるたびちゃぷんちゃぷんと波を打ち、
その音は心までも踊らせる。
戯れにそこらで拾った木片でひゅういと風を切ると、
音に驚いた雀がちちち、と歌い、枝から飛び去られ揺れて舞った紅葉は抜ける青空になんと映えることか。
もう随分と来た、そう振り返ればひらけた眼下には自分の暮らす村があり、黄金の収穫を終えた朽葉色の田畑を取り囲む山々はそれぞれ異なる衣をまとっている。
秋の盛りである。もう幾日も経たない内に山は落葉を始め、衣を落とし土にたくわえ、長く厳しい冬の支度に勤しんで、あたたかな春が来るまで眠るのだ。
適当な岩を見つけて腰を降ろし、娘のこしらえてくれたおむすびとすこしのつまみに瓢箪を傾ける。
一口二口と重ねれば、もうほろ酔いである。
「実に心地ようござるなあ」
酔いに任せてつぶやくと、ぴょこり、と応えたのはこぶ二つである。ふわふわもふもふ。
うむ、中々のさわり心地。
三軒先の磯野さん家のタマに負けず劣らず、いや我が友はそれに勝る毛並み。
指先にふれるこぶはかすかにあたたかく、そうだそうだと言うようで。自ずと可笑しくこそばゆい。
「のう、こぶよ。ひとはみな何かに酔うのでござる。
花に香りに筆に剣。賭けにお馬に、娘に恋に。
さしずめ拙者は酒といった所でござるなあ」
はは、と笑っていると、ざあと冷たい雨が降ってきた。
山の天気は移ろいやすい。
名残り惜しいがどうにもならぬ、冷えてよいこと一つもなしや、とおむすびつまみを口に放り込んで瓢箪をしっかと腰にやり、林の中へ入るとちらほらと雨宿りの先客、
鳥獣がおのおの群れをなしている。
その混雑に、やや失敬失敬、と声をかけながら進んでいくと、うろのある老木が目に入り、これは具合が良さそうだ。と逃げこむと、思った通りのお座敷であった。
これはいい場所を見つけた。ささ、どうかなみなさん、
このお座敷に入らんか?と猿や雉らに機嫌よく声をかけ、そうしていつしか静かな雨音にすうすうと寝息が混じりはじめた。
by nominingen | 2010-12-30 00:47 | お知らせ


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