オンリ新刊サンプル
月華遊星3の新刊サンプルです。

原作前世設定+設定資料集での設定「変身すると瞳の色が変わる」を妄想、
+フォボスとディモスを妄想した結果、ほんのり捏造しています。

※注意
・木星と火星がガチンコ喧嘩するバトルものです。







その日のシルバーミレニアムは、ちょっとしたお祭り騒ぎだった。
とはいえそれは国中がではない。パレスの一部、特に国防に属する所。つまり王国の兵達のあいだのことだった。月の四守護神、火星のプリンセスでもあるセーラーマーズの凱旋。双子の忠臣、フォボスとディモスを連れ、兵を率い、国に仇なす妖魔達を滅ぼしてきたのだ。向かい来る敵の攻撃もなんのその。引き裂こうとのばされる敵の爪を避け、牙をかわし、潰そうとする蹄をいなし、圧倒的な力を逃がし、敵を地面に叩きつける。まるで呼吸するように戦い、踊るようにして敵を倒すその姿に思わず見とれて動けなかった、と言う者さえいて。その活躍は華々しかったという。しかし、そんなことはジュピターにとってはどうでもよかった。だから適当な大部屋に検討をつけ騒ぐ大勢の声にここだと思い扉を開け目に入った兵が誰かも何かも考えず、問うた。
「マーズが今どこにいるのか、知ってるか?」


大変な戦いだった、と思う。何度か背筋に嫌な汗が伝うような場面もあった。まるで足が言う事を聞かないこともあった。大きな負傷こそしなかったが、肌や髪をかすり、命を削ごうとする剥きだしの攻撃。乾いた喉のひりつきが胸の奥の情けない震えを小突き、それが歯の根に伝わってうるさく鳴る前に食いしばる。訓練ではない実戦。ずっとそれに備えていた筈なのに。敵の牙や爪にちらちらと見え隠れする影が嘲笑する。いつもいない振りをした死の近さに肌が粟立ち、積み上げたと思っていた鍛練の日々が揺すぶられて霞む。滲む汗と一緒に脳裏に流れるいくつもの光景に、ぎゅっと瞼を閉じてしまいたくなった。けれどそんな事を私達が思う度。噛み砕こうとした牙と裂こうとした爪を払うあざやかな色があった。それは敵へと向かう心を喚び起し、かすんだ闘志をマグマのようにあふれさせ、そしてなにより夜明けを思い起こさせた。昇る太陽、始まる新しい日。待っている日常。それに何度も鼓舞され、荒れ狂う灰の風と攻撃、黒い返り血で塞がれそうになる目をこじ開けて戦った。気づけば敵に動く者はなく、その真中にはこの広い銀河でただ一人の主、銀河一神々しく輝く火星のプリンセス、マーズさまその人がいて。呆気にとられ動くのを止めた体からの猛烈な疲労感の訴えは、その姿に跡形もなく吹き飛んだ。あれだけの猛攻に自ら身を投じ細い体をさらしていた筈なのに、出陣直前とまるで変わらぬ出で立ち。ほんの少しでも触れることすらさせなかったのだろう白は眩しいぐらいに輝き、髪すらもつれることなくいる。違う所があるとするなら微か乱れた息と、一筋額に張り付いた髪と、赤い瞳。乾いてひきつれた声でその名を呼ぶのはためらわれ、それ以上にたまらなくなって走りだす。マーズさまは私達に気づくと二、三瞬きを繰り返し、自身のお色と同じ瞳を、いつもの紫に戻される。太陽の落ちる空を、流星の速さで見たよう。惜しい、と感嘆の息を吐く前に、マーズさまは少しだけ微笑まれ、帰りましょう、とだけ仰って歩き出される。それに慌てて返事をして、その隣に立つとマーズさまはこの戦いに参加した全ての者の顔を見渡すようにゆっくりと辺りに目を向けられると、帰還の命令を告げられた。

「――お疲れ様でした」
フォボスの差し出した紅茶を力なく受け取ってマーズは一口だけ飲むと、くたりと私室のソファにその身を預ける。瞼を閉じているのをいいことに、フォボスとディモスは顔を見合わせて苦笑した。誰の目にも明らかに、マーズは疲れていた。それもそのはず、マーズはつい先ほどまで勝利の美酒に酔いしれ普段より大胆不敵になった兵達に称賛喝采感謝感激の雨あられにあっていたのである。兵と守護神、そのヒエラルキーが物を言って物理的にも音量的にも遠い所から言うのが通常なのだが、マーズ自身が兵達の元へ訪れるという貴重な機会と、兵達を浮つかせるほど華麗な大勝が起因し、逃げる間もなくめちゃくちゃな賛美の大合唱を聞かされる羽目になったという訳だ。素晴らしいお力でした。艶やかな黒髪がさっと流れて敵が伏していくのは魔法のよう。なによりあなたの横顔ときたら緋色の瞳がルビーよりも輝いてその美しさは千言万語に費やしても…云々。私達がとやかく理由をつけて退出していなければ、マーズを囲んだ宴会になだれ込んでいたかもしれない。元々大それた宴に好んで参加されたりはしないし、ご自分にも他にも厳しくあるが、優しいお方だ。思惑の無い好意は色恋云々でない限り受け取られるから。しかし小さく混じっていた不穏な発言(遠回しな表現だったけれどやましいと思われるもの)があった以上、断固として遠ざけなければ。深い息と共に沈む体。少しだけ乱れた髪。きちんと閉じてはいるが投げ出し気味の足の珍しい姿。守護神も流石にといった所だろう。気づかれないよう室内の明かりを絞りながら、今のマーズさまは子供のようで愛らしいなぁ、などと知られたら怒られてしまうようなことを考える。とはいえそこは双子のテレパシー、そんなことはおくびにも(顔にも声にも)出さずにそっと毛布をかける。
「もうお休みになられてはいかがでしょうか」
食事も湯浴みもなさいましたし、と続けるディモスの言葉にぱちりと目を開けて、マーズはきっぱりと首を振り立ち上がる。
「ヴィーナスとマーキュリーへの報告があるわ。そろそろ二人とも、仕事に区切りがつくでしょう」
そう言ってマーズはかけられたばかりの毛布をソファにやってしまい、ぐい、と冷め始めた紅茶を飲みきる。あなた達こそもう休みなさい、と続けられた言葉に、二人ははっきり、いいえ、と断る。マーズは今一度二人を見ると何も言わず最低限の身支度を始め、二人もそれぞれ毛布をしまい、カップを片づける。扉が閉まるのを確認せずにマーズは部屋を出て、そしてすぐ二人も三歩後ろからついていく。規則正しい三つの足音が夜の廊下に響く。澄んだ反響音。無駄な会話はない。それはいつものこと。けれどいつものことではないことが、戦いの前からあった。しばし歩いた所で遠慮がちにフォボスは口を開く。
「ひとつ、我々からお伺いしてもよろしいでしょうか」
歩く速度を緩めず、かといってどうしたと問うこともないマーズの背に、恐々とディモスが続けた。
「ジュピターさまの所へは、行かれないので?」


宴会騒ぎの兵をとっ捕まえて聞きだしそうやって見つけたマーズはいつも通りでいて、足音か気配かそれとも自前の第六感かは分らないが数十メートル離れたあたしを即座に見つけた。マーズがその歩みを止め、不審な顔つきをしたフォボスとディモスが目を丸くしたのも気にせず、ずかずかと近づく。マーズの表情は変わらない。
愛想のない仏頂面。にこりともしないどころか眉ひとつ動かしはしない。しかし目だけはすべて受け入れると、手前勝手に構えている。だから言い放つ。
「あたしを燃やしてみろ」
開口一番言い放った瞬間。マーズの眉間に今まで見たこともないほど深い皺が刻まれ、忠実なフォボスとディモスが縋るような視線をこちらに向ける。今のマーズはお前を今すぐ殺すぞ、とでも言い出しかねない表情をしているように見えるのだろう。傍目には。空気がちりちりと緊張を帯び始める。フォボスとディモスが眉を寄せて一層強く訴えてくる。今ならまだ間に合う。矛を下げられる。それにはまず、あなたから。フォボスが一歩前に出て、何か言いたげに口を開きかけたが言葉を出させなかった。遠慮なしに無礼に近寄り、慇懃に視線を合わせた。真っ直ぐに。馬鹿がつくほど丁寧に。
「燃やしてみろ」
っ。と息を無理矢理のんだ音がユニゾンする。どちらか一方が手をのばしかけて止めて、縋る視線が糾弾に変わって敵意すら混じり始める。が、そんなことは知ったことか。深い紫の瞳がぐらぐらと煮えたぎり眉間の皺はとっくの昔に消えうせてその代わりにあふれるエナジーが髪をなぶる。そこらの空気よりもあたたかい、いや、熱いぐらいの風がこちらまで届き、空へと逃げていく度に、煽られる。一瞬で燃やせるだけのものを持ちながら、それでもこいつは、まだ出来ないとぬかすのか。そんなに出来ない出来ないと駄々をこねるというのなら。
「やらせてやる…よ!」
襟ぐりを引っ掴んで。顔がぶつかりそうなぐらい引き寄せて窓からガラスごと叩き落として。飛び降りた。


どうして。言葉なく、全身でそう問われた所まではよかった。彼女の問いは至極真っ当なものだったから。前線に赴き、常にと言っていいほどの戦場を共に長らく闘ってきた。過ごした時間、空間。そこで培った信頼と紡いだ絆。それを一方的に断ち切ろうとしたのは私だ。なにも告げずに。疑問に思われても仕方ない。
怒るのも無理はない。どれだけ罵倒されてもなんらおかしくない。だというのに彼女は、ジュピターは。
あろうことか、自分を燃やせ、と言った。


ばきばきとやかましい音を立てて大木の枝を折りながら着地したにしては、随分と静かだった。片膝をつき、恐らくは着地した時と同じ体勢で、マーズはそこにいた。折れた枝と割ったガラス片がその周りに四散していたが、服にも体にもなんら傷はない。あっさりと投げられたとはいえさすが戦士。と言えないこともない。しかし戦士が、あんな馬鹿正直な攻撃を避けられもしないと言うのか。小細工も技術もないただの力任せの直線。不意を突かれたなんて言訳にすらならない。一歩前に出る。踏みしめた地面と足の間で、ごり、とガラス片が耳障りな悲鳴をあげる。必要以上に力を乗せた。が、しゃん。と、踏み砕いたガラス片をさらにがりりと地面にすりつけて、更に一歩前へ進むと、遮るようにぶわりと風が吹く。
「あなたというお方は…!」
フォボスかディモスか。その声がどちらだろうが誰だろうがどうでもいい。二人がとさかにきているのは見なくたって分る。威嚇を超えた痛烈な視線。不必要に舞い上がる風と極限まで開いた羽。主人を守るようにして立ち並んだ左右対称の体勢と、空気を震わすほどの両の手に集まるエナジー。あと一歩でも進もうとしたならなんの躊躇なく攻撃してくるだろう。上司、部下。主人の仲間、従者。そんなことはもう二人には関係ない。それはこっちだって、最初から同じこと。一瞬の光。驚きの表情すら出来ないまま二人は吹き飛びマーズはその瞬間弾かれたように地面を蹴り出す。目標物へと向かう最短のルート。正直すぎる直線。窓から叩き落としたその時から溜めこんでいた動作なしの雷撃で迎え撃つ。走る閃光はマーズの横をすり抜けて足止めにもならずに虚しく壁にぶち当たって散った。次の瞬間には軽い体重と重いエナジーに速度でよくのった拳が眼前に現れる。上半身を捩じり反らしてよけ、時間稼ぎと右手に収束させた雷を零距離で叩き込むべく体を戻そうと踏み込む。が、それを待たずに無理矢理上半身が引っ張られる。頭を髪ごと引き倒されたと気づいた時には地面と空が上下逆さまになっていた。どっ!と鈍い音と衝撃が背中に響き、慣れ親しんだ濃い土の匂い。衝撃は柔らかい草の葉が吸収してくれたおかげもあるが、それ以前に。視線を送ると相手はこちらに背を向けて倒れ込んだ二人に駆け寄るべく走りだそうとしている。びき、と音を立てたのは血管かそれとも地面か。半端に収束させたエナジーを力任せに投げつける。重量の無い雷球は誰にも当たることなく地面をえぐり、弾けた土と草が汚く混じり合ってばらばらマーズと二人に降りかかる。鳥の羽のように、逆立った髪がとぐろをまいてこちらに向き直る前に走った。
「マーズさまっ!」
痛切な金切り声が耳を刺す。みしみしと筋肉の軋む音をさせながらそれでも呼ばれた主人は事もなげに蹴りを受けとめていた。煮立った瞳の色は、それでも静かな夜半の色。守護神一の力にただ任せて足で細い腕を圧していく。ゆっくりと、しかし一瞬たりともゆるめず。ぎし、と嫌な鈍い音が離れた二人の耳にまで届いたのかばね仕掛けのように立ち上がり叫んで、声と体そのものをこちらへの罵倒にして駆ける。
「その足をどけ――!?」
驚き。戸惑い。
そんなフォボスとディモスの声を不審に思う前に、ジュピターとマーズはパレスから遠く離れた荒野の空へと投げ出されていた。


「派手ねえ」

まるで他人事の様な言い方と台詞に、マーキュリーは隠すことなく平たい筈の眉間に深い谷をつくった。月の智将。鉄面皮のブレーン。流れる血は青で体温は金属と等しい。一皮むけばその実態は驚くなかれ、機械仕掛けのサイボーグ。などと言われることもあるマーキュリーの表情は、冷たい。自身の氷よろしく相手を震え上がらせるどころかいっそそのまま砕きそうな様相だ。しかしのん気に呟いた四守護神の長であるヴィーナスは、この表情を自身の事務仕事を放りだしたり忘れたりやらかしてしまった時によくよく目にしているので、さして気にせず窓の向こうを見続けている。その上落ちた緑の雷と燃え上がる赤い火を目にしておおー、と歓声をあげながら優々たる動作で入ってきた扉を閉め、そのまま備え付けのソファに一人腰を落ち着けてしまった。それでますます突っ立っているマーキュリーの眉間に皺が寄るのだが、いつも通りのゆったりとした所作で、「座ったら?」とにこやかにすすめてくる。マーキュリーは眉間に今だ深い谷を作っていたが、室内に走った緑の光に一瞬眩しそうに瞼を閉じると、そのままヴィーナスには一瞥もくれずにソファに座る。ヴィーナス本人はそれを穏やかに見届けると、また窓に視線を戻す。上等なソファは女神を包むように小さく沈んだっきり、後は静かでいる。マーキュリーは黙ったまま視線を窓へ従わせた。
「クイーンのお手を煩わせて。何をやっているのかしら」
「喧嘩でしょう。若いっていいわね、情熱的」
即答する声はあくまでも明るい。楽しむ風ですらある。
「若さ情熱もいいけれど、困りものよ」
鋭角で、予想よりずっと低音。四守護神のマーズとジュピターが、お互いを殺しかねない争いをするなどと。
理由と事実はどうあれ、流れていく情報は口と視点を介して分解され曲解され拡大と誇大を繰り返した後、推測され想像され、真実とはかけ離れたものとなる。現在クイーンが結界を展開し、守護神以外の目に触れぬようしてくださっているが、ガラスの割れる音やジュピターの雷を見た者は何人か居るだろう。堅い忠誠心と口をもったフォボスとディモスは言いふらすことなどしようもないが、とかく噂という情報はその悪意のあるなしに関わらず広まっていく。そんな情報は不利益にしかならない。王国の兵、民の不安を煽ることにしかならないし、敵につけ込まれる格好の隙となりかねない。国交の場面においてもそんな不安材料を抱えた国は信用が得にくいし貿易にも支障が出る。そうなって笑いが止まらなくなるのは一部の商人とやたら戦争好きの者達だ。それについては対策を既にとってあるが、すべきことは他にもある。少なくともマーキュリーは、そう考えている。窓の向こうがめらめらと明るくなり、照らされたヴィーナスはそれでも動かず、口を開く。
「いつだって物事は、今その時のタイミングで起きるしかないわ。あとは、どう受けとめるかよ」
そう言って、ヴィーナスはおそらくかすかな微笑を浮かべたのだろう。見なくても容易に想像が出来る。一体その自信はどこから来るのかと、今すぐ問いただしたいほどに。ため息がついて出る。ついてから、当てつけ混じりで随分子供染みているなと思うが、マーキュリーはそのぐらい感情を出した方がいいと他の守護神全員が口を揃えて言うのだからよく分らない。ブレーンとしての役目を果たす為に常に冷静であれと思ってきたし、そう行動しようと努めているのに。計算が全てだとは思っていないが、構築し展開したそれがまるで効果をあげないとなると、果たして自分には一体何が残るのか。夜の空に光が弾け、また消える。
「…これをあなたは、いいことだと?」
色濃く残った声の剣呑さにも、もちろん、と即答された。
「でもあなたは逆に受けとってるみたいね」
非難の音声ではない。今日は天気がいいですねと言うような声と、同種。
「私は、状況と情報から予測しているだけ」
「そしてそのどれもが不安につながるのよね、あなたは」
そこまで言われて、マーキュリーはついに強い視線を送る。窓を見る目。すっと通った鼻筋。なだらかな頬。
結ばれた唇。そのどれもがいつも通りのヴィーナスだ。けれどその眼差しが、灯台の様に強く、雄大でいて。彼女が操る剣が放つ、黄金色の反射光のような。そこまで思って、脳が弾きだし当てはめた、真顔、という言葉の適当さに何故か感嘆したのも束の間、振り向いたヴィーナスは吹き出した。しかも、こらえきれずといった風に。「ヴィーナス?」
「ああ、ごめんなさいね。馬鹿にしたとかそんなんじゃないの。ほんと、あなたはあなたらしいなって思って」くすくすと笑うヴィーナスにマーキュリーやはり眉間に皺をよせる。怒りではない。ただ、不可解だ。ひとしきり笑い終わって気が済んだのか、それとも最初からそうしようと思っていたのか。やたら真面目な、毒気を抜いてしまう顔をして、それでいて穏やかにヴィーナスは続ける。
「ねえマーキュリー、『喧嘩』って、そんなに悪くないものよ。真正面からぶつかって言い合ってやりあうって、いいことだと思わない?確かにそれが原因で全部壊れてしまうこともあるけれど。でもやらずにああしとけばこうしておけばなんて、それこそ不毛じゃないかしら。それにこの国の四守護神なのよ?お互いちょっとつついてダメになるほどやわじゃないわ」
「――ちょっと、ね」
微かだが、けれどその地点では辺りを揺るがしているだろう轟音が遠いここまで届く。地を食らわんばかりの雷光。天を焼き尽くす火。これを、ヴィーナスはちょっとだと言うのだろうか。言葉も続けず、窓の向こうを見ることもしないマーキュリーを見つめ、ヴィーナスは立ち上がる。
「理屈ばっかりみたいに見えるけど、やっぱり二人が心配なのよね」
そうしてやはり、その自信は一体どこから来るのかと問いただしたくなる顔で、微笑んだ。
「医務室で待ちましょう」
差し出された右手を何も言わずにとったマーキュリーにヴィーナスは一度だけ頷き、歩き出した。
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by nominingen | 2013-04-11 20:33


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