叱咤ラリアット

ふとかっこよくない玖我さんがぽんと出てきてたので更新してみる。

漢前のなつきや女の子のなつきやヘタレのなつきも好きですが、かっこよくないなつきも好きです、ええ。
それに加えてたまに弱気になる静留も好きです。
あと叱る舞衣。

なのにあんまり静留が出てこない静なつssはーじまーるよー






午前九時四十八分。

昨日の就寝時間は九時三十七分で、つまりは12時間ほど寝ていたという訳だ。
ごろりと寝返る。特に何がある訳でもなく、もう一度眠気が来やしないかと五分待って諦めた。
もぞもぞと芋虫のようにベッドから這い出る。
目の前を伝う黒い線。なにか意地のように伸ばしていた髪。邪魔くさい、とかきあげて、いっそ切ってしまおうかと考えた。

高校二年の秋だった――。



特徴的なイントネーション。
距離も何も、程遠い関西のそれはいつの間にか耳に馴染み、ついでに体に馴染んでいた。
だからついぼんやりして、つい流されて、つい流してしまう。
楽しい?と聞かれて、楽しいと答えた。
本心だった。自分には一生関わりのないものだと思っていたし、関わるつもりもなかったから。
今思えばなんという愚か者だろう。流行りの言葉で言えば中二病ってやつだ。そういえば、最盛期はまさにその年だった。
その一年後に会って、今に至るあいつは、そう、とだけ言って笑った。
逆に聞く。楽しいか?と。
高校とは違う講義にサークル、時々ある親睦会(という名の飲み会or合コン)は、彼女からしてまあまあのものらしい。
ふーん、とお茶を飲んで、やけどしてこぼして、濡らした。


…あーあ、とベッドの上で呟いた声は、あの時あいつに聞こえていたんだろうか。



――それからちょっとして、何日か学校をふけてこうしている。
具体的な数字は分からない。携帯は中途半端に解体されてテーブルの上にのっている。
夜中に充電器を差したままファイナルファンタジーをやってきた「つけ」だろう。いつのまにか携帯の電池がふくらんで切れていた。
それから電池パックを外して放って置いている。
テレビをつける。教育番組だった。めーめーとヒツジが鳴いている。
ソファに座りこんで二分ほど見て、ごろりと寝ころんだ。
めーめーヒツジが鳴いている。ヒツジを数えれば眠くなると言いだしたのは一体どこのどいつだろう。

「あーあ」と言ってみる。

なにがあーあ、なのだろう、と考えてみた。
ヒツジの鳴き声がしているのに寝れないことか、学校をさぼったことか。それとも予約したゲームの発売日が今日なのを忘れていたことか。
ピンポーン、と音がして、扉を開けたらにこやかにハンコかサインを要求されたり――はしない。
いつだか外出したとき、ついでだからと近所のゲーム屋に頼んだからだ。
くだらない事ばかりにまわる頭に「あーあ」と遅い昼食をとる精力と一緒に息を吐いた。

むっくりと体を起こす。遅すぎてもはや昼食ではない夕食をとるためではない。
適当に引っ張り出したジーンズとTシャツ、それにパーカーを羽織る。
乱雑なテーブルの上、財布とカギをポケットにつっこむ。
なんとなくバイクに乗りたくなった。愛車は一台目も二台目も吹っ飛んだから、下にあるのは三台目だ。
いつか三台目も吹っ飛んだら、流石に保険がきかなくなるだろうか。まあ吹っ飛んだら何もかも関係なくなるだろうが。


がちゃりと扉を開けて、何日かぶりの外に出た。














そこは土砂降りのザーザー雨だった。なんだこれ。台風でも来てるのか。















結局マンション近くのコンビニへ徒歩で行き、適当な雑誌を立ち読みしてカップラーメンとコーヒーを買った。




帰路についてふとマンションの扉を見る。そこには見慣れたオレンジ色の制服と髪が明らかに俯いていた。
やばい、と反射的に身を引くと、焦燥しきった瞳が大きくなり、次に睨まれた。
きゅう、とどこかが音を立てた。何か言おうと口を開きかける。
体が動いて、大きく腕が広げられた。
多分、次に訪れるのはまだ十分に慣れない、どうしようもなく、ぎこちなくなる、

「なにやってんのバカ!」
「ぐぁっ!?」

首に入れられた上腕二等筋+後頭部にスクール鞄、の衝撃に思わずうめくと共に、
際限なく?マークとちかちか星が飛ぶ。

それは見事なまでのラリアットだった。

なんの躊躇もない一撃に呼吸を止めながら、世界がスローモーションで流れていく。
怒りに燃えた瞳、灰色のコンクリ、切れかけた蛍光灯。
そういえば管理人に言おうと思って言ってなかったっけ、と端っこで考えながら、なつきは奇跡的に倒れず留まる。
雨水で濡れた廊下と着ているパーカーがお気に入りなのを思い出した上に、ぐいっと想像出来ないような力強さで引き寄せられたから。


それから散々学校にきちんと来るように叱られて、携帯はどうしたのと問いただされて、休む時は連絡するようにと約束を取り付けられた。


何か言う暇もなく、ただ肩を縮こまらせてうなずいていると、なつき、と聞き慣れたイントネーション。
振り返ると、乱れた髪に濡れた肩を上下させているあいつが居て。
しず、と言いかけようとした時にはもう腕の中だった。
体がぎこちなく強張る。何も出来ずにいると、眉を寄せて笑う顔があった。
情けないことだがそれに背中を押され、おずおずと背に手をまわして。

ふとカップヌードルが無惨に床に転がっているのに気づき、思い出したようにきゅるる、と腹の虫が鳴った。









あとがき

そんな静なつss(と言い張る
たまにこんなような欠片がちらほら積もって、萌えの欠片もないようなものに。
やはり自分は器用なようでいて不器用なとこがある静留が好きなようです。
舞衣はなつきを叱る時は叱る、そんな親友で居て欲しい。
あと電池パックが膨らむとほんとビビる

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by nominingen | 2009-09-23 23:57 | 舞-HIMESS


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